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2025年12月18日

なぜ噛み合わせがズレるのか
—現代人に多い“生活習慣型咬合不全”とは—

 

噛み合わせの話をしていると、患者さんからよく尋ねられることがあります。
「気づかないうちに、噛み合わせってズレたりするものなんですか?」
——これが、実は“ある”のです。

もちろん歯そのものが勝手に大きく動くわけではありません。
しかし、日々のちょっとした姿勢や癖が積み重なることで、
顎まわりの筋肉のバランスが変化し、噛み合わせのズレとして感じられることがある
——
これが近年、歯科の世界で指摘されている考え方です。

本稿では、生活の中で起きている“噛み合わせの変化”について、
日常の風景を交えながらお話ししてみたいと思います。

 

スマホ姿勢と噛み合わせ

通勤電車の中、あるいはデスクワークの最中。
ふと気づくと、私たちは前のめりになってスマホを覗き込んでいます。

頭が前に出る姿勢は、首まわりの筋肉を常に緊張させ、
その影響が顎の動きにも波及することがある、と言われています。

長時間の姿勢のクセは、
“今日はたまたま”ではなく、“毎日の積み重ね”です。
こうした習慣が、噛み合わせの違和感として現れることがあります。

 

気づけばやっている「食いしばり」

仕事中にぐっと集中しているとき。
運動の後、気持ちが高ぶっているとき。
あるいは夜、眠っている間。

私たちは、気づかぬうちに歯を噛みしめていることがあります。
歯を強く当て続けるわけではなく、
“軽く触れ続けているだけ”のことも多いのですが、
これが咀嚼筋に負担をかけることが知られています。

「歯を当て続ける癖(TCH)」は、
現代人にとても多いと言われる生活習慣です。

 

片側だけで噛むというクセ

利き手があるように、噛むときにも
“なんとなく右で噛む”“気づいたら左ばかり”
というクセを持つ人がいます。

これは痛みや噛みやすさ、料理の硬さなど、
日常のさまざまな要因で生まれます。

左右どちらかの筋肉ばかりに負担がかかると、
顎の動きにわずかな偏りが生じ、
噛み合わせの変化として感じられることがあります。

 

ストレスという“見えない力”

噛み合わせに関係する咬筋・側頭筋は、
ストレスの影響を受けやすいと言われています。

緊張したときに奥歯をぎゅっと噛みしめたり、
夜間に歯ぎしりをすることが増えると、
筋肉は休む時間を失い、
その結果、顎の動きにも影響が出ることがあります。

現代の忙しい生活は、
無意識のうちに顎まわりの筋肉に負担をかけているのかもしれません。

 

ドクター領木コメント

「噛み合わせは“生活の癖”と深く結びついていることがあります。
だからこそ、診療では歯そのものだけでなく、
姿勢や噛む習慣、筋肉の状態など、
日々の生活に目を向けながら総合的に確認するようにしています。
何が負担になっているのかをご本人と一緒に整理し、
気づくきっかけを作ることが大切だと考えています」
—— 九段下りょうきデンタルオフィス ドクター領木

 

 “生活習慣型咬合不全”という考え方

これは医学上の正式な病名ではありませんが、
生活習慣によって筋肉や顎の動きが変化し、
噛み合わせの違和感として現れる場合を、
わかりやすく説明するための一般的な表現です。

噛み合わせの状態は、
“歯だけ”で決まるものではありません。
日々の身体の使い方、癖、姿勢、食べ方……
それらの積み重ねが、ゆっくりと影響を与えることがあります。

 

気づきのサイン

例えば、こんな経験はありませんか?

・朝、頬がこわばっている
・左右どちらかの顎が疲れやすい
・気づくと上下の歯が触れている
・こめかみが重く感じる日がある

これらはいずれも、噛み合わせとは無関係なこともありますが、
生活習慣による筋緊張のサインとして挙げられることがあります。

気になることがあれば、
歯科的な観点から噛み合わせの状態を確認することで、
“何が負担になっているのか”を知るきっかけになるかもしれません。

 

【参考文献・情報】

(※すべて一般情報であり、特定の治療効果を示すものではありません)

・日本顎関節学会:生活習慣と咀嚼筋の関係
・厚生労働省:顎関節症に関する一般情報
・Okeson JP. “Management of Temporomandibular Disorders and Occlusion”
・TCH(Tooth Contacting Habit)に関する一般的な研究
・国際頭痛分類 ICHD-3:筋緊張と頭部症状のカテゴリー